疲労克服のコツ

疲労回復の決め手はやはり質の高い睡眠

呼吸は、横隔膜を下げて胸腔を陰圧にすることで肺に外界の空気を吸い込む動作と、逆に肺から空気を自然に送り出す動作で構成されています。これは風船を膨らませることが大変なのと同じで、いびきのない健康な方でも実はかなりの運動負荷が生じているのです。

人はそれを休みなく24時間死ぬまで繰り返しています。なにひとつ運動しなくても毎日生きているだけで約2,000キロカロリーのエネルギーを必要とするのも、呼吸にかなりのエネルギーを要しているからと言われています。

海外の報告では、いびきがひどい場合、睡眠中の呼吸に通常の10倍の労力を要することがあると報告されています。呼吸はただでさえ運動負荷が大きいものです。この状態が一晩中続くと、疲労が回復するどころか更に蓄積してしまうこともあります。疲労回復には、睡眠の質の改善が一番です。

究極の抗疲労物質「イミダペプチド」を毎日摂取しよう

2003年からスタートした産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」では、抗疲労効果が期待される23種類の物質を用いてダブルブラインドクロスオーバー法を用いた臨床試験を実施してきました。そのなかで、客観的・科学的な評価において最も高い疲労軽減効果を示したのがイミダペプチドでした。

健康な成人男女18人を対象に、イミダペプチド200mgが入った飲料を継続して飲むグループと、イミダペプチドを含まない飲料を飲むグループに分けて、4週間飲んでもらった後、疲労測定を行いました。自転車こぎ運動を3時間半行ってもらい、4時間休息した後に自転車こぎ運動を再開、ペダルの回転数の違いを調べたのです。その結果、イミダペプチドを摂取したグループでは前半の回転数に戻っていたのに対し、イミダペプチドを摂取しなかったグループの回転数は落ちる一方でした。この試験結果から、イミダペプチドを継続的に摂取したグループでは、作業効率の低下が抑えられることが確かめられました。

さらに試験対象者から採取した尿や血液を検査したところ、イミダペプチド200mgを摂取したグループでは、筋肉への負荷によって生じる筋肉組織の損傷や酸化によるダメージが小さく、疲労による自律神経(意思とは無関係に働く神経)の乱れも改善されていました。
疲労による自律神経の乱れは、首・肩のこりや眼精疲労(重度の疲れ目)などの症状として現れることが少なくありません。筋肉のこりにはマッサージ、疲れ目には目薬といった対症療法もありますが、イミダペプチドは自律神経の中枢を修復するので、根本的な解決につながると考えられます。

近年になって、「ふだん通りの生活をしているのに疲れる」「過酷な運動や労働をしないのに疲れが取れない」という人が急増傾向にあります。
そこで、別の試験では、日常生活で疲れを自覚している20~64歳の健康な男女207人(男性66人・女性141人)を対象に、疲労軽減の程度を調べました。イミダペプチドを、1日に200mg摂取・400mg摂取・摂取しないという3グループに分けて、4週間後と8週間後に検査を行ったのです。

その結果、イミダペプチドを1日に400mg摂取したグループでは2週間後以降、200mg摂取したグループでは3週間後以降に、安定した疲労改善効果が認められたのです。
同じ対象者に自転車こぎ運動なども行ってもらったところ、イミダペプチドを摂取すると運動後の疲労が素早く回復することも確かめられました。

また、イミダペプチドを摂取した健康な男性グループに、全力で自転車こぎ運動をしてもらう試験も行ってみました。すると、イミダペプチドを摂取したグループでは、こぐ力が強くなることや、作業効率・運動機能が向上することが判明したのです。

イミダペプチドの有効成分であるイミダゾールペプチドは、ニワトリの胸肉から採取されています。疲労改善のために必要なイミダゾールペプチドの量は1日200mg。ニワトリの胸肉を100g食べれば、200mgのイミダペプチドが摂取できます。イミダペプチドは、長期にわたって摂取しても問題がないことも確かめられています。イミダペプチド200mgは、鶏の胸肉なら100gに相当します。毎日食べるのが無理な方はサプリメントを利用するのも良いでしょう。
健康な成人男女44人を対象に、イミダペプチド400mgを含んだ飲料を12週間にわたって毎日飲んでもらう試験では、健康への影響がまったくないことが確認されました。また、イミダペプチドを毎日1200mg、4週間にわたって毎日飲んでもらうという試験でも、害は認められませんでした。推奨される分量より多量に摂取しても問題がないことがわかったのです。ほかの薬を飲んでいる人やお子さんが飲むこともできます。 イミダペプチドは、カフェインやアルコールのように「飲んだ瞬間に疲労感が消える」という麻薬的なまやかしの効き方はしませんが、継続して飲むことで疲れにくくなっていきます。筋肉疲労だけでなく、肩こりや疲れ目に悩んでいる人にもイミダペプチドを試す価値は高いです。

自律神経に優しい環境をつくる

動物の生命活動にはリズムがあり、概ね1日周期になっています。朝起きて、食事をして、というようなリズムの他、体温やホルモン分泌など生命維持に関することも時間帯に応じて変化しています。そんな1日のリズムを「サーカディアンリズム」と言います。

自然環境は常にゆらいでいるため、動物はそれに合わせた本能を持っています。サーカディアンリズムも自然に同調するように調整されています。

しかし、現代のヒトの生活においては、温度も湿度も明るさも一定の場所に長時間いる機会が多くあります。デスクワークはその典型です。ゆらぎのない環境にいるとサーカディアンリズムが乱れ、自律神経の機能が低下してしまいます。

私が手掛けた実験で、ゆらぎのある環境とゆらぎのない環境それぞれにおいて、仕事の作業効率や疲れ方はどう変わるかを調査したものがあります。エアコンの温度を一定に保った部屋と、温度を適時変化させるというゆらぎを作った部屋で、同じ作業を行います。その結果、ゆらぎがある部屋で作業したほうが、作業効率が上がり、疲労感も少ないといことがわかりました。

人工的にゆらぎを作ることは、疲れに対して効果があります。ゆらぎの効果でサーカディアンリズムが本来のように整い、疲れを司る場所である自律神経が機能的に働けば疲れづらくなると考えられるからです。

日常生活の工夫でサーカディアンリズムを整えると、自律神経への負担を軽減でき、疲れにくい体を作ることができます。たとえば、光の工夫です。朝は、朝日の優しいさくら色の光を足下から徐々に浴びながら目を覚ましましょう。昼は昼光色、そして夜になるにつれ、夕焼け色のオレンジ色の光に変えながら徐々に照度を落とし、寝るときには消える。こんな照明制御を行えば自律神経に負担がかからず、結果として疲れづらくなります。

最新理論で誕生「疲れない部屋」 

毎日の環境にゆらぎを与え、サーカディアンリズムを整えることが、自律神経に優しい生活であり、疲れづらい生活です。この発想から近年誕生したのが、「疲れない部屋」です。もちろんなにをしても疲れないわけではなく、あくまで「そこにいると疲れづらい」というものです。部屋の中では、温度や湿度、風、照明、音、香りなど、さまざまな環境が適時変わっていきます。トータルなコントロールシステムを作ることで、その空間の目的に応じ細部まで調整できるようになっています。

今、私たちは、「エコナビスタシステム」という抗疲労の快適居住空間制御システムを構築しています。「エコナビスタシステム」は、家中の住設機器を一括制御し、快適に、かつ仕事効率を落とさずに省エネを実現できる究極の「疲れない部屋」創造プログラムです。

夏の暑い時期には「冷房温度は28度に」という取り組みが定着してきました。25度の室温を28度に設定すると7%の省エネになります。しかし一方で、その環境で8時間仕事をすると、仕事のパフォーマンスが15%落ちることが明らかになっています。

省エネと疲れというのは、実は深いつながりがあります。ただただエネルギー削減ばかり謳っても、疲れが溜まることでエネルギーをロスしている場合があるのです。仕事において、エアコンの室温は快適に保って大丈夫。省エネ重視の観点からも我慢する必要はありません。そして、ときどき窓を開けるなどして意図的にゆらぎを作り出せば、さらに作業効率が上がるでしょう。

「集中力を鍛える」ことは危険!

「うちの子供は集中力がなくて…」と嘆く保護者の方の声をよく耳にします。しかし、ご安心下さい。そもそも動物にとって集中力なんて必要ないのです。

注意をひとつのことに集中させること自体、動物にとっては非常に危険な行為。たとえば、サバンナにいる動物が目の前にいる小動物に注意を集中してしまったら、あっという間に背後から天敵の肉食獣に喰われてしまいます。人間も、運転中、目の前の車にだけ集中したら、歩行者の飛び出しに気づかず事故を起こしてしまうことでしょう。また、疲労の観点からも、集中することは、脳の一か所の部位だけを酷使することになりますから、脳の疲労を起こしやすい状況を作ります。

本当に鍛えるべきは、集中力ではなく、注意をうまく分散し配分する能力です。この能力が高い人ほど、まわりの情報を統括的に把握し、速やかにかつ的確に反応できます。ゆえに、思考においても行動においても無駄がなく、疲れにくい生活行動をとれるのです。

注意をうまく配分する能力を高めるには?

注意をうまく配分するには、複数の作業を同時に行うワーキングメモリの能力が必要です。たとえば、一方で作業を着実にこなしながら、一方でもっとベターな方法はないか思考する。あるいは、物を探すとき、一方で隅々に視線を動かしながら一方でそれがどこにありそうかを考える。注意をうまく配分しながら同時に二つのことを行うことで作業が効率化し、結果として疲れを防いでくれます。

脳を鍛えるには日常生活において同時に複数の作業をする習慣を心がけましょう。ラジオを聴きながらの読書や車の運転などが効果的ですが、最も良い訓練は多くの人とコミュニケーションをとることです。人との会話は最もワーキングメモリを活用します。ワーキングメモリをうまく使えるようになれば、過去の記憶も活性化され会話がどんどん弾みます。

お笑い芸人は、ワーキングメモリの達人!

多くの職業のなかで、最も注意の配分とワーキングメモリを必要とするのが「お笑い」の仕事です。お笑い芸人はこの能力がないと人を笑わせることができません。さらに、笑いを起こすには「空気を読む」ことが大切ですが、その場に適した発言や行動をするには、やはり話しながらも周りを見通す注意の配分が不可欠です。

私の友人で、長年、第一線でバラエティのMC(司会進行)をしているお笑いタレントさんがいますが、彼はまさに空気を読んでその場の状況に応じて最も適した発言をする天才です。彼はこのように話していました。

「司会進行しながら、周りの雰囲気を読み、視聴者が次にどういう発想するかを考え、視聴者が発想する0.5秒前に自分が発言すると、共感の笑いを得ることができる」

この才能は、お客さんに商品を買ってもらうセールスマンや会社の中での人間関係の構築にも大きな武器になることでしょう。

疲れたくない人、将来ぼけたくない人、仲間をいっぱい作りたい人は、ひとつの作業にこだわらず、ワーキングメモリを鍛えて脳を幅広く活用してはいかがでしょうか?

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